2009/06/30

エッシャーの階段

■何時間、見ていても飽きない絵がある。

中学生の時、美術の教科書で初めて見た、
M.C.エッシャーの『Belvedere (物見の塔)』
こんな不思議な線が描けるなんて、すごく面白いと思った。

早速、紙に鉛筆で、模写してみた。
なるほどね。
こっちとあっちの線の重なりを、逆にするから、おかしくなるんだ。
なんだか、魔法が使えたような気持ちになって、ウキウキした。

以後、エッシャーのような、歪んだ空間の図形や絵を見つけるたびに、
その絵の中を自分が歩き回っている様子を、
時間を忘れそうになるくらい想像しては楽しんでいる。



■渋谷の「Bunkamura ザ・ミュージアム」で開催中の展覧会、
『奇想の王国 だまし絵展』に行ってきました。

だまし絵と言ったらエッシャーだろう、と思った私。
でも、エッシャーの絵があると、本気では思わなかった私。
まぁ他のだまし絵が見れたら面白いだろうな、と思って、大阪帰りのついでに、
山手線を反対に回って、渋谷に寄れば、楽だし良いや、と軽い気持ちだった私。

そしたら見てしまった。
美術の教科書にあった、小さい『物見の塔』じゃなくて、
実物大の、じゃなくて、
本物の、『物見の塔』を!

わぁー…。
本物が。
エッシャーが実際にその手で描いた紙とインクが。
今、私の眼球の前にあるんだぁ…。


感激だった。
でも、それにも負けないくらい、
他の芸術家たちのだまし絵(だまし作品?)も、素晴らしく面白かった。


以下、気になった作品リスト。

★no.28 コルネリス・ノルベルトゥス・ヘイス・ブレヒツ『食器棚』
→食器棚の格子に、手紙とか新聞の切れ端とか、
 いろんなものが挟まれている様子が描写されている。
 一つ一つのモチーフの写実が見事で、ずっと見ていて飽きない。

★no.12 ウィリアム・ホガース『誤った遠近法』
→エッシャーと似ている。エッシャーは図形がメインだけど、こちらは風景画。
 手前の建物から顔を出している人と、向こうの丘にいる人が触れ合っていたり。
 そういう所を探し出して、「くすっ」とできるのは、
 『ウォーリーをさがせ』と同じかも。

★no.89 歌川広重『即興かげぼしづくし 入りふね』
→障子の向こうに、大きな木舟と、それに乗る小さな2人の人影が…
 これを一人のおっさんが、窮屈に逆さまになりながら、
 足の指に棒?を挟んで船を形作り、
 両手には箸と何かを持って小人を表していたのに笑えてきた。
 宴会芸だね、素晴らしい。

★no.103 ルネ・マグリット『望遠鏡』
→額縁の中にあるのは、両扉の窓。
 そのガラスには、清々しい青空と白い雲が写っている。
 でも、右側の半開きになった窓の向こうを除くと、底知れない闇がある。
 一瞬、「あれ?」って首を傾げてしまう。空と闇の対極がズシンと響いてきた。

★no.139,141,140 本城直季『「small planet」シリーズより』
→ミニチュア?本物? 一体どっち? って思わせる写真。
 これは絶対、ミニチュアだろう、と思う。
 でも、よく見ると、やっぱり本物なんだよね。
 あれ? でも、どうしてミニチュアに見えちゃうんだろう…。
 写真集が2500円だった。欲しい…。買おうかな…。

★no.129 パトリック・ヒューズ『水の都』
→これはすごかった。やられた。
 だまし絵です、って分かってるはずなのに、
 トリックを理解するのに、散々時間を費やした。
 これは実際にこの作品の、
 手前2mの位置を左右に3mくらい動いて見てみないと、
 この「え? え? なんでなんで? どうなってるの?」
 って感動が、味わえないと思う。
 眼前に、壁の奥に、ベネチアが広がっていきます。



以上。楽しかったあ!
『奇想の王国 だまし絵展』特設サイト
http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/09_damashie/index.html
★『食器棚』も見れるよ。


今週末は、
「エッシャーの絵に中に迷い込んだよう」と迷路やパズルに例えられることの多いその物語作品
と評される劇作家さんの演劇を、Mちゃんと観てきます☆
今週はエッシャーづくしだぁ♪(^0^) 楽しむぞー!